さっそくですが、ここでひとつ名画を鑑賞してみたいと思います。
見たこと、ありますか?これはIT業界の風刺画として広がったものです。ごく簡単に紹介します。
お客様は、開発してほしいシステム(ここでは、木の枝に下げる遊具)をプロジェクトチームに説明します。しかし、システムに長けているわけではないので、的確に説明することが出来ません。どこか変な仕様です。
それをシステムアナリストが設計します。いきなり幹を切って、支えるために支木を両脇に入れています。ひどい設計です。それを見たプロジェクトリーダーは3番目の絵のようなものと理解、それを聞いたプログラマが作ったものが4番目の絵です。木と座面がロープでつながれているもの、にはなりましたが、顧客の要件はどこへ行ってしまったのでしょうか。
一方、営業は開発中のシステムがお客様にとって快適で素晴らしい体験をご提供します、などと美辞麗句を並べます。と、いうような様々な立場の皮肉な表現が続いて、最後に「顧客が本当に必要だったもの」が描かれます。
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絵は描かれるシチュエーションによって改変されますが、元をたどると1970年代、当時のアメリカ産業界を風刺したものとして登場していたということです。そのことからも、こういったプロジェクトにつきまとう永遠の課題でもあるのかもしれません。
困った「システム開発あるある」ですが、このような笑うに笑えない状況を避けるため、私たちは何をするべきでしょうか。
コミュニケーション
これは、ほぼコミュニケーションの問題です。
それぞれの立場で意見は異なると思います。ただ私個人としては、顧客は顧客なりに要件を説明しているのであり、「顧客が本当に必要だったもの」が何なのか、様々なやりとりを行って、何らかの形で視覚化して顧客とビジョンを共有すること、そこをまとめるのもプロの腕の見せどころだと思うのです。スタートで躓くと「顧客が本当に必要だったもの」との乖離が大きくなって、誰も幸せになれない事態に陥ります。
デザインワークでよくある例をあげてみます。
顧客:
「ここの文字、もうちょっと大きくしたいです」
「メニューの色は赤くしてください」
こういったオーダーに、あなたはどうこたえますか?
真意を探る
「なんでそこ、そういう指示するかなー、バランス崩れちゃうじゃん」
「そこ、なんで赤にするの」
というようなことをまず思い浮かべるかもしれません。こう思うこと自体、口にしない限りはまったく普通のことです。ただ、デザインに関わる者としては「なぜ顧客はそう言ったのだろうか?」ということを考えたいものだ、と私自身は思います。顧客の「ここの文字をもっと大きくできますか?」という発言から、ちょっと推理して意図、狙いを引き出して、可能なら提案もしたいところです。
デザイナー:
「なるほど。このサービスは今一押しですからね。フォントを大きくするのもいいですが、例えばこんなふうに目立たせてみるのはどうですか?」
「確かに、ここは訴求したい部分ですからね……ただフォントを大きくすると強弱がはっきりしないので、少しだけ大きくして、他の要素を少し弱めてメリハリをつけましょうか」
ゴールがきちんと顧客とプロジェクトの各メンバーで共有されていれば、そこまでの手段について、正解は一つに限らないと思っています。様々なアプローチがある中で、最終的な目標に到達する。まずそこが大事なのだろうと思います。