君はソクーロフの太陽を見たか

先週末、吉祥寺で友達と映画を観た。僕が誘ったのだ。

アレクサンドル・ソクーロフ「太陽」
http://www.taiyo-movie.com/

テーマは「人間」昭和天皇の終戦にまつわる苦悩。それをイッセー尾形、佐野史郎、桃井かおりらが演じる。そんなロシア映画だ。僕の直感が、スクリーンで観ろ、と言った。それは正しかった。

ストーリー、それ自体は特に目立った盛り上がりもなく、淡々と進行してゆく。セピアトーンにやや褪色し、ボケの強い画面と共に、世俗と切り離された皇室アルバム的、あるいは御伽噺的な世界観を演出している。

見所は役者陣の演技だろう。イッセー尾形の昭和天皇は、過不足なく僕らの心の中の昭和天皇像を的確に表している。そして、とても(世俗的という意味ではなく)人間らしい。彼だからこそ出来る表現だと思った。現人神たる天皇を取り巻く人々との対立、ギャップもよく描かれている。

侍従長、佐野史郎も素晴らしい。監督は彼を見たとき、すぐ侍従長に相応しいと思ったそうだ。そして史実や台詞を細かくチェックしたのも彼とのこと。脚本もロシア人作家の手によるものだったが、台詞については通訳や役者陣で練り直したり、アドリブを多く取り入れているらしい。あまりに自然な流れで、これがロシア映画だということは、意識していなければ忘れてしまうだろう。時代考証についてはツッコミどころがあるらしいが、僕は鑑賞中特に気にならなかった。

神として生まれ、人となることを選んだ昭和天皇。近代的な軍を持つ帝国の皇帝でありながら、絶望的な無力の中に生きることの不条理。ここまで読んで興味が持てたなら、ぜひ劇場に行くべきだろう。

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いがらしたけし